2017年07月9日
【作品インタビュー 第2回】たけのこ 2001年制作

【作品インタビュー 第2回】たけのこ 2001年制作

たけのこ 原画写真(額装あり)[2001年制作]

運営horiokohkichi(以下 運営K):今回は【作品インタビュー 第2回】の「たけのこ」です。たか子先生よろしくお願い致します。

奥山たか子先生(以下 奥山先生):よろしくお願いします。

前回のおさらい

運営K:前回の「白い実」のお話では、「陶里庵(とうりあん)」という画廊に作品を飾ることになり、そこのオーナーさんが「はいこれ。用意しといたよ。」と、持ってくる野ぶどうや自然の植物を題材にしたのがきっかけで、自然の美しさに改めて気づくことになり、それから葉っぱなどのデッサンをしまくって、どんどんどんどんと琴線に響かせながら創作に没入していったということでした。
そんなことがあって、これから自然を描いていくという視点というか、主題になっていったという感じで宜しいでしょうか。

たか子先生:そうなんです。それまではね、やっぱりね、描かせてもらうために準備するんだけど、まず花を描いたことがあまり、いやほとんどなかったのね。
その時はまだ、まだカルチャースクールの講師をやってなくて。
で、ここが始まってすぐにカルチャーの講師の話が来ましたのでね、ただね、「花を描けないのにどうやってカルチャー教えるの?花描けなきゃ。」と思って、ここで発表しながら、カルチャーでも教えられるように、花、花、になるわけ。
最初椿でも、どうやって描くのって感じで、大変な思いして花にとりかかりましたの。それまで人物だとか、花は描かないで葉っぱは描いてたんだけど、花を描いたことがないわけです。

運営K:なるほど。なんとなくですけど、日本画で花を描かないというのは珍しい気がしますね。牡丹とか菊とかモチーフになりそうですけど。

たか子先生:だって日本画で牡丹、誰だって描いてるでしょ?私描く必要ないでしょって思う。(笑)

運営K:(笑)なるほど。そうすると、その前までのモチーフでは・・・

たか子先生:花を描いたことはありません。

運営K:じゃあ、テーマみたいのもあんまり自分の中では・・・

たか子先生:人物、野菜、鳥ね。

運営K:人物、野菜、鳥。…あ、たか子先生が好きだと言っていた「ヘビクイワシ」とか。

たか子先生:そうそうそう。ヘビクイワシ。
Wikipedia ヘビクイワシ

 

2001年制作「たけのこ」

運営K:さて、本題の「たけのこ」のお話を伺っていきたいと思います。
(※まだ、作品をご覧になっていない方は下記のリンクからどうぞ)

たか子先生:前回も申しあげましたが2001年でしょ。ドロドロの最悪の時です。

運営K:(笑)なぜ「たけのこ」を選んだんですか?この時は。

たか子先生:これはね、生徒さんが「先生、たけのこ採りに行くから来ないーっ」と、お知らせ頂き行ってきました。

運営K:「たけのこ」採って、結局こういう風に描いちゃうんですねぇ。これは、一体、何に見えてたんでしょうか?(笑)

たか子先生:「たけのこ」ですよ。「たけのこ」をそのまま描いたらこうなります。

運営K:「たけのこ」ってこんな根っこしてるんですね?

たか子先生:だから自分で掘るのよ。自分で掘るからこういうのがあるわけです。八百屋で買ったら、カブンっと切っちゃうでしょ?ここで。

運営K:この赤い点々は何でしょう?

たか子先生:こういう色がつくの。根っこなのこれ、根っこのとこにぷつぷつぷつぷつが付くの。透明なの。

運営K:透明で赤いんですか?

たか子先生:先っちょが、あるじゃない。ざくろが、透明で中が赤いでしょ。あれと一緒。だから自分で掘って崩れないように掘るのよ。そのために自分で掘りに行ったわけです。自分で鍬入れて、周りをダーって掘って、崩れないように、わいわいわいわいやりながらやるわけです。1日がかりでね。

運営K:なんかもう、生き物みたいな、生命力を感じますよね。

たか子先生:大好き、大好きな絵。ドロドロの気持ち悪い雰囲気がたまりません。
ギャラリーに「うど」があるでしょ。テニスクラブでうどをね・・・

運営K:あ、「たけのこ」の話をしてほしいんですけど・・・(笑)

たか子先生:あ、そうかそうか。(笑)

 

売れる絵は描けないわけですよねー、基本的に。(笑)

たか子先生:昔からね、いろんなとこ写生行って森林公園やなんか行くとやっぱり、竹林が好きで、そうすると必ずそういう時期に行くと伸びきった「たけのこ」だとかの断片を見てるんです。これほんとに、「新鮮だったらどうだったんだろう?」って思うわけですよ。なので生徒さんが「たけのこに興味があるんだー」って言われると繋がってくるわけ。

そしたら絶対掘りに行って、チラッとどっかで見たってことで、そうして、見つけたのを大事に掘る。だから人任せには絶対できない。「掘らないでね、私行くからね。」って言って、一生懸命車に乗っていくわけです。
それで行くから、だいたい予想してるわけです、こういうものは。それでそれ以上のものがあって、うれしいうれしいって描くわけです。

運営K:それ以上のものってのは例えばどういうことですか?

たか子先生:もうビクビクもんです。なんか表現できないよね。我々はスーパーで見ると根っこなんかきれいに切られてるからまず無い。だけど、私はここら辺の根だって十分に絵を描くってのはあるけど、大抵の人は綺麗な方を描くの。もういいそこはって、あたしはここ(※根っこ)描くぞって感じ。根っこだけでいいけど、その上もついてるからからちょん切るわけにいかないから、一応仕方がないから一緒に描く。私はここだけをガーっと描きたいけど、ちょっと気持ち悪くなりすぎる、誰が見ても。で、ちょっと抑えめに。もっともっとブチブチだよ、根っこ。もっと気持ち悪い、ブチブチですよ。

運営K:そうですねぇ。気持ち悪いというか、一般的にはたけのこの根っこは見ないですもんね。だから根っこじゃ無い方に目が行きガチなんですけど、この作品は、左の方にね、なんだかひっぱられるんですよねぇ。

たか子先生:そりゃそう。魅力ない。普通に描いてんだもん。(笑)

運営K:今話聞いて、やっぱりだから根っこよりも無責任に描いてるというか、
根っこの方に何かパワーがあるんですかねぇ、これは。

たか子先生:そうでしょ。ここ命。このために描いてんだもん。

運営K:今の話聞かなくても、ムズムズすんですよね、この絵を見てると。
常識とは違うもんがでてるような、何かが引っかかるんですよ。何かなーって。

たか子先生:だから、私は意識して描いてるから。絶対気持ち悪がる人がいるだろうなーって。
私は気持ち悪くない、大好きよ。でも絶対気持ち悪がってるな、ここで蟻んこでもたかってたら余計気持ち悪いだろうなって。ほんとはすごい蟻んこがたかって案の定、蟻の行列。

運営K:でもこれが実は、自然の中では、あまり目には触れないけどありのままの姿なわけじゃないですか。それをみんないわゆる根っこ切って、描きやすい方を描く中で、敢えて根っこ描いちゃうのは、なんでしょう?琴線に・・・

たか子先生:そう、バチンバチンよ。(笑)
気持ち悪くない。全然気持ち悪くない私。描きたくてしょうがない性格です。(笑)

運営K:僕の個人的な気付きなんですけど、最初にたか子先生の作品を「自然の息吹をテーマ」にしているとか素直に聞いているわけですね。でも、このあたりの作品を見てるとね、どうしたってこうすぐに腹に落ちてこないわけですよ。これを美しいという風に、あたりまえの美しさとして認識していない自分がいるわけですよ。
それで、あっ、これはひょっとして幼い頃の自分が森とか林とかの中にいて、なんか自然に対して怖いなというか不気味だなって感じていたこととかを、ちょっと思い出してしまうんですよね。ゾワゾワしています。

たか子先生:私だって、「白い実」のぶどうをもらった時だって、ほんとにみんながもらってるきれいな感じではなくて、この中に入ってる、なんていうのツブツブのぶどうがクツクツクツクツ。そのクツクツ感に狂喜したわけ。いわゆるブドウはこうなってるけど、これはね、妙なくっつき方してるわけ。それ白じゃなくて、赤、紫、ぐじゅぐじゅになってるわけです。その無造作になってる姿を。それ見たら震えるでしょー(笑)

運営K:たぶん、そこなんですよねぇ。(笑)
そこで震えないと、やっぱりねぇ。画家としての使命はそこでしょうね。

たか子先生:だから売れる絵は描けない、基本は。(笑)

 

琴線に触れる題材を、虎視眈々と。

たか子先生:きれいだってわかってるのよ薔薇だって百合だって。それを私描かなくていいじゃないって思うのが最初にあるわけ。
もっと上手に繊細に愛でる人がいるわけです。私よりも愛でる人がいるわけです。花きれいですねーなんっていってね。

私も描きますよ。でもそういう描いてる人たちに、無礼者、お前なんか描くな、お前は食物でも描いとけって言われそうな気がするわけよ。(笑)
「あー、すみません、私はたけのこが好きです。でもちょっとヒマになったら牡丹も描きたいなって思ってます。」みないな。(笑)

運営K:(笑)逆に言うと、描けるものもあるし、幅が広くて、花しか描けないってわけではなくて・・・

たか子先生:私ね、ほんとにねカルチャー教えるようになってからものすごい幅広くなった。だって花だってね、もちろんこれ下手だけど。あのね、牡丹も描けます。デッサン大好きですから。

運営K:そうですね。ギャラリーにアップされている作品を見ていると面白いよなーって思います。同じ人の作品とは思えない。(笑)

たか子先生:ある人にね、あなたはね、一貫性がないって言われるの。確かにその通りなんです。
例えばほら、みんな同じ絵を描いてるじゃない、牡丹でもずーっと。牡丹でも、色んな牡丹がある。あなた牡丹一個しかないよねっていうわけ。すぐ違う絵を描く。
私の実力なりに。例えば牡丹で下手なら下手なりに出し尽くしてる。
でも、同じように素晴らしいものができるよう、ここでヘトヘトになる。これ「たけのこ」だってどっちかというとヘトヘトなの。
「たけのこ」だって、これ一個しか描いてないわけよ。「これのもう1つ?蛇足でしょ。」って。そしたらもっとこれよりも響くものを虎視眈々として狙ってるわけです。
そうして、「うど」が私の前にね。(笑)

運営K:(笑)「うど」は2011年の作品ですから、この「たけのこ」から10年の歳月を経っているわけですよね? それで、「キター!」っていうのはすごく面白いですねぇ。

虎視眈々と狙っていたものとしての「うど」についてもこの後インタビューしますので、そろそろ今回はお開きにしたいと思いますが、たか子先生から何かありますか?

たか子先生:いいえ。また随分と脱線してしまいました。お世話かけます。

運営K:(笑)こちらこそ、仕切りが不慣れですみません。
それでは、次回も宜しくお願い致します。

たか子先生:はい。どうも失礼しました〜。

 

編集後記

運営K:ここまでお付き合いくださった皆様、ありがとうございます。
作品インタビュー第2回「たけのこ」楽しんで頂けたでしょうか?

インタビュー記事は録音した音源から文字を起こしています。
口語体で掲載した方が雰囲気が伝わると判断してそうしています。インタビュー中は終始笑いが絶えない時間となりました。そんな感じの雰囲気なので、語尾などのニュアンスを掴むのにご苦労されたのではないかと思います。ただ少しでも作品を一緒に鑑賞した感じになっていただければ幸いと思っております。

ご意見やご感想などありましたら、是非送っていただけますと励みになります。
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次回のインタビューは今回の話で上がっていた「うど(独活)」を予定しています。
楽しみにお待ちくださいませ。