【作品インタビュー 第1回】白い実 2000年制作
はじめに
運営horiokohkichi(以下 運営K):さて、それでは記念すべき作品インタビューの第1回を始めていきたいと思います。たか子先生よろしくお願い致します。
奥山たか子先生(以下 たか子先生):よろしくお願いします。
運営K:では最初にですね。このインタビューシリーズのテーマと目的について、簡単に私の方から説明させていただきたいと思います。
たか子先生:はい。お願いします。
運営K:このインタビューの趣旨としては、「遊譜 YUUFU」に訪れてくれた皆さんに、一緒に作品を鑑賞しているような、そんな雰囲気を少しでも感じて頂きたくて始めているということです。
「遊譜 YUUFU」で過ごす時間が少しでも楽しい体験になってもらえたら良いなぁという感じですね。
たか子先生:はい。その通りですね。
運営K:インタビューのテーマとしては、ギャラリーにアップされている作品について、たか子先生が「どのような視点」で、その素材や題材を選んだのかということを軸に進めていきたいと思っています。
たか子先生:はい。わかりました。
野趣に富んだ出会い
運営K:では、前置きが長くなってしまいましたが、早速ギャラリーにアップされている一番過去の作品で、2000年製作の「白い実」について伺っていきたいと思います。よろしくお願い致します。
一応、まだご覧になっていない方は、下記のリンクをご覧頂ければと思います。
たか子先生:はい。よろしくどうぞ〜。
これは、2001年がブナのシリーズがスタートの年だから、その前年。
17年前、大昔ですね。もう生活も、もう大昔のね、ものすごく嫌な時(笑)
運営K:(笑)この白い実(み)って、実際何の実ですか?
たか子先生:ぶどうです。野ぶどう。野ぶどうのぶどうの実がどんどん変色していくの。
最後はね、もう白く、あのね、白?何ていうの?骨?
白骨の白さになっていくの、ふわーっと透き通った感じの。
最初はもう真っ赤。そのうち紫。黄色。
運営K:ヘぇ〜。野ぶどうですか。一度も見たことないなぁ。
たか子先生:これ見るとあの頃思い出すのよね。
だから、今があるのかな。全部OKよって感じ。必死だった。
運営K:一体、何があったんでしょう?(笑)
その人生ドラマも気になるところですが、この絵についてのお話を先に伺いたいですねぇ。(笑)
たか子先生:これはね、とにかく私が、新百合ヶ丘行く前の頃で、小さい個展をスタートした平成1年くらい。
陶器屋さんの壁に小さい作品展をする機会を得ました。
油絵の女流作家の友人に、「画廊があるけどやってみない?」って言ってもらったのがきっかけで、そこの画廊が「とうりあん」。
運営K:どういう字ですか?
たか子先生:陶器の陶で「陶里庵(とうりあん)」。
そこのオーナーさんが、奥山さんが惨憺たる思いをして絵を描いてることを知ってる。スタート時点で。
それで、オーナーがお店に来るまでの道すがら、ブラブラ歩いて野原を歩いてくるところに山桜があったり、野ぶどうがあったり、色んなものをいっぱいひっぽぬってきて、私にくれるわけです。
「はい。奥山さん用意しといたよ。」って。
画廊に行くたんびに、こういうものをちゃんと置いといてくれるわけです。
それまでね、本来私、こういうの描かないできてましたから。
運営K:なるほど、そういう出会いがあったんですねぇ。
たか子先生:そう。そういう野趣に富んだものをいっぱい持ってきてくれて、それで、私は自然を見るようになったわけですよ。
それがスタートだったの。
琴線に触れに触れ。
運営K:その「陶里庵(とうりあん)」のオーナーさんが持ってきてくれた野ぶどうや、そのほかの色々な野原にある植物たちと向き合う日々の中で、初めて、その自然の美しさというか…
たか子先生:そう。そこで初めて気付くというか、気付かされた。
「なんだ自然ってこんなに素晴らしいんだぁ」って。それで一生懸命デッサンするわけです。隅から隅までデッサンする。そうすると、「うわぁ、なんだこの一粒一粒!」と思って、克明に写生するわけですね。
そうすると、どんどんどんどん入っていくわけです。
そうすると、日本画の題材がどうのこうのより、デッサンは私もともと好きな方だから、デッサン力で芸大入ってるから、だからね、デッサンするのは好きだからどんどんデッサンの腕は磨いていけるわけです。ただ岩絵の具の使い方はほんっとにダメでね。
で、岩絵の具の使い方が出来なくて、いつまでも汚い色で描いてるんで、息子が「きったない色だなー」って。「よくこんな汚い色で描いてられるな」って。(笑)それくらい汚い色なんです。
運営K:(笑)でも、この質感はすごいですよねぇ。
[写真:「白い実」原画]
たか子先生:だって丹精こめて、精魂込めて描いてますから。
これが売れるんだったら良いけどジークレーが絶対いいと思う。
これ原画は見てますでしょ?
これはやっぱりジークレーでしょ。これ原画は渡せない。(笑)
運営K:(笑)ジークレー版については、おいおい発表していくとしても、いやいや、原画も雰囲気を感じてます。最悪な時期?に描いた感じが。(笑)
たか子先生:でも実際、この頃から葉っぱが描けるようになりましたね。もう葉っぱはまかせてって感じです。
運営K:それはすごいですねぇ。そういえば、さっきどんどん入っていっちゃうって言ってたじゃないですか。それは、どんどん描くことに没入していくということですか?
たか子先生:そう。どんどんどんどん。その美しさがどんどんどんどん見えてくるのよ。琴線に触れるっていうの? 琴線に触れに触れるものが、自然界にあるっていうのを解らせてくれてるわけです。
だから、裏切りがないわけです。
そうするとどれだけ写生したって、あっという間の3、4時間。だから自然って、やっぱり鍛えさせてくれるんです。
それでいて、飽きることがないわけです。
それをやらせてくれたのが、この「陶里庵(とうりあん)」のオーナーさんです。
文学、文筆家なので、すごい、要するにアウトサイダーなんですね。
会話してるとものすごく私は心にしみいり、厳しさがビンビンくるので、「あ、ここで長いこと個展できるなー」と思って。
そうして長年にわたりお世話になりました。
ここに何気に遊びに来た、聖蹟桜ヶ丘の京王デパートの6階のギャラリーのスタッフが見に来られ。
私はそこから7年目に京王デパートでの個展が始まりました。
てふてふ。舞っちゃえーって
運営K:なるほどぉ、作品の題材を軸にしたことによってその時のきっかけとかが聞けたのはちょっと面白いですねぇ。というか楽しいです。
でもこれ、このギャラリーページにアップされている最古の作品ですけど、なんかね、確かにこの絵をパッと見たときに、なんだろわかんないけど…
たか子先生:気持ち悪いでしょ、そうでしょ。。不健康。
運営K:不健康(笑)
でも、やっぱり自然の美しさに目覚めた時のなんでしょうね。雑に描かれてるようには感じないんですよ。他の並んでる作品とはちょっと趣が異なる感じで個人的にはとても好きな作品です。
たか子先生:生かされてるって感じ。すべて生かされてる。
そんなことに気付かされて自然に対して謙虚さと素直さで描いていたと、そう思います。
運営K:そっかぁ。面白いなー。
やっぱり自然を相手にしているとそうなってくるよねと。だからかけがえのないものになるんでしょうね。
最後に、ここまで話を聞いて、ちょっと気になるのは、題材としてこの「てふてふ」なんですが。(笑)これは何かあったんですか? 覚えてることとか。
たか子先生:いやいや、これだけ(野ぶどう)ですと死にそうな絵。苦痛なのよ。いい絵を描く云々じゃない。生活環境が、苦痛だらけなのですからね。(笑)
もう、ここいろんなものが妄想して、集中したいんですが、できないわけです。
でも必死になって描いて、こんなんじゃなくて、もうちょっと幅、かわいらしさでもなんでもって。
それで、思いついたのが、チョウチョだったの。てふてふ。舞っちゃえーって。
で、ここトンボじゃだめなのよ。てふてふじゃなきゃいけないの。
運営K:アハハハハ。
でも、このチョウチョがよかったんじゃないですか、全体的に。
たか子先生:てふてふなかったらダメなのよ。白いチョウチョじゃダメなのよ。
白い実だからね。黄色か、あるいは揚羽蝶じゃだめなのよ。
運営K:色としてもね、補色じゃないけど、黄色と青とバランスをとっていますよね。
面白いですねぇ。こうやって一つの絵で話聞いていくの面白いですね。
たか子先生:まあね。私としては、言わされちゃった。
運営K:ハハハ。語りたかったのでは?
たか子先生:いや、語りたいこともあるけど、今更ね、昔のこととやかく言ってもしょうがないな。(笑)
運営K:でも今回の「白い実」では、この作品にまつわる背景がターニングポイントとなって、その後は自然を描いてくっていう視点になっていったみたいなことが知れたので、とても貴重なインタビューになったのではないかと思っています。
たか子先生:そうですか?でしたら良かったです。
運営K:私としては非常に楽しい時間でしたが、これを文字に起こして記事にするなると、「遊譜」のファンの皆さまにうまく伝わるかどうか、少し不安ですが…
たか子先生:まぁ、それはどうでしょう(笑)
運営K:とりあえず、今回はここまでとさせていただいて、大変貴重なエピソードをありがとうございました。次回も宜しくお願い致します。
たか子先生:はい、ありがとうございました。こちらこそ、宜しくお願い致します。
編集後記
運営K:ここまでお読みくださった皆様、ありがとうございます。
初めてのインタビュー記事でしたが、楽しんで頂けましたか?
一緒に作品鑑賞しているような気分になって頂けたら幸いです。
今回の作品は2000年制作の「白い実」でした。
10号(F型)の作品で、雲肌麻紙に岩絵の具で描かれています。自然の息吹がテーマとなる「奥山たか子作品」の最初の作品ということで、インタビューの初回にぴったりの作品で驚きでした。
なお、「遊譜 YUUFU」では作品の販売も行なっております。下記作品ページより購入の手続きが行えるようになっております。原画は一点物ですので売約済みの場合はご了承下さい。
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次回のインタビュー記事も是非お楽しみに。